〈見性成仏〉は禅の目標だとお話ししました。禅の向かわんとするところです。それでは、どう戻ればいいのか、その方法というのが〈直指人心(じきしにんしん)〉です。
あれこれ考えず自分の心にそのまま向かえばいい
人の心とは
この句で言う「人」とは自分のことで、「心」とは〈仏心(ぶっしん)〉のことです。つまり「人心」とは、自分の〈仏心〉という意味です。
「直」とは行為のこと、時間のこと、それとも?
では「直指」とはどういうことを言うのでしょうか。 「直」には、なおす、ただちに、じかにという意味があります。「直す」は行為、「直ちに」は時間、「直に」はその様子を表現しています。行為と時間とその様子が同じ一字に現れているのです。ここでは「そのまま」というのがその本旨になります。次に「指」には、ゆび、さすという意味がありますね。「指す」には、指し示す、指名する、将棋指すなどの他に、ある方向へ向かう、目指すという意味があります。ここでは向かう、目指すという意味が適しています。つまり「直指」とは、そのまま向かうという意味なのです。
「直指人心」とは自分の仏心にそのまま向かえということです。